mayuge のヒマラヤ・トレッキング日記 Trekking TOPITINERARY<pastnext>
【8日目】 ロブチェ〜ゴラクシェプ〜エヴェレスト・ベースキャンプ
The 8th Leg "Lobuche〜Gorak Shep〜Everest Base Camp"


 午前6時05分起床。昨夜はなかなか寝付けなかった。それは期待に胸を膨らませたわけではなく、絶えずギュルギュルという不穏な音をたてて僕に緊張を強いる腹と、次第にグキングキンと強さを増してくる頭痛のせいだった。なんとなく眠りかけると1、2時間ですぐに目が覚めるという状態。頭痛の原因は、きっとここロブチェの高度(4,920メートル)とストレスだろう。起き上がってみると頭痛は引いていったが、今度は腹が張って出るものも出ない状態に。昨日の朝昼晩、しっかりと下痢止めを服用したのがここへきて効き過ぎてしまったようだ。

 ロッジの外へ出るとこの日も目の前にヌプツェが見えた。太陽の光を受けて右側の稜線から輝き出す様子が、実に美しい。この自然だけがこのトレッキングの救いだとさえ思える。


正面の白い三角形の山がプモリ。手前で褐色の肌を見せているのが
カラパタールだ。ゴラクシェプはその麓にある。
 午前7時45分出発。大きな岩がごろごろと転がる崖をアップダウンを繰り返しながら進む。さすがに空気もさらに薄くなったようで、呼吸は困難を極める。しかし、右手にはダイナミックな氷河、前方には白く、そして美しく聳え立つプモリ、という絶景の連続に励まされる。


 午前10時10分、ゴラクシェプ到着。標高5,140メートル。何故かここだけは岩が姿を消し、砂地となっている。まるで干乾びた湖の底のようだ。

 この日宿泊するロッジ『SNOW INN』に荷物を降ろし一休みしたのち、午前11時10分、水とカメラだけを持ってエベヴェレスト・ベースキャンプへ向け出発する。

 平らな砂地の感触は足に心地よいが、少しずつまた頭痛が頭をもたげてきているのが心配の種だ。

ゴラクシェプの砂地でヤクがお見送り。前方中央に見えるのがチャンツェだ

プモリを眺めながら一休み?

 尾根を迂回して左へ曲がると、カラパタールに隠れていたプモリがまたその姿を見せてくる。年配の夫婦トレッカーが仲良く岩に腰掛けてプモリを見上げているのが微笑ましい。 遠くに見えていた山々がどんどん近づいてくる。チャンツェもいつの間にかすぐそこにあるかのように感じられるところまで来た。


クーンブ氷河の荒々しい表情。前方、山の間からはチャンツェが顔を出している

 我々が歩いているところのすぐ横、右手にはクーンブ氷河が広がっている。氷河の表面には土砂がかぶさっているため、一見、砂山地帯のように見える。

クレバスには要注意
 しかしその砂山地帯の上を歩くと、それが紛れもない氷河であることが分かる。所々クレバスが口を開けて待っていたりするのだ。薄い酸素の中、うっかりすると足を取られることになり兼ねない。これは気をつけないと。
 なかには氷の部分が岩の間から飛び出ているところもある。エメラルドグリーンを帯びた氷の固まりは、彫刻のようでもある。

大自然の芸術


ダイナミックな「流れ」
 「氷河らしい氷河」にもお目にかかれる。岩肌を削り取って豪快に「流れている」様子が迫力満点だ。もちろん実際には動いているように見えはしないが。

 やはりこちらも不思議なエメラルドグリーン。マイルドセブン・メンソール、といった感じだ。

エヴェレストが姿を見せた
 ベースキャンプに近づいたところで、今度はエヴェレストが姿を見せてくれた。頂上の部分、ちょこっとだけではあるが、頭を快晴の空に突き刺すようにして我々を見下ろしている。

 晴れてはいるが、山頂付近はかなり風が強いようだ。雪煙とも雲ともつかない白いもやが稜線で踊っている。

 こうして近くで見てみると、エヴェレストとチャンツェが非常によく似ているのに気づく。どちらも山頂付近の壁面に右上から左下に向かって赤い地層の帯が走っているのだ。おそらくこの地層は同じ時代のものなのだろう。

 しかしこれだけ登ってきて、さらに見上げているこの山が、かつて海底だったなんてやっぱり信じられない。

エヴェレスト登頂を目指すインド・アタック隊のテントが見える
  午後1時50分、エヴェレスト・ベースキャンプ到着。ゴラクシェプからは2時間40分かけて歩いてきたことになる。天気は相変わらず問題ないが、頭痛がひどくなってきているので、岩に腰掛けて休息をとる。

5,300メートルを突破
 晴天のおかげで気温は摂氏12.7度まで上がっている。標高は5,300メートルを超えた。

コリア隊の隊員にも会えた
 すぐ横にはコリア・アタック隊のテント群があった。真っ黒に日焼けした男たちが、まるで当たり前のように生活しているのが印象的だ。しかしさすがにシャワーはないらしく、分厚い靴下を脱いで足を洗っている人の姿が見られた。こうして待機しながら頂上アタックのための条件の良い日を狙っているのだろう。


ここがヤクたちの終点だ
 彼らの生活を支えているのが、ヤクたちだ。大規模な登山隊になると、登山家をはじめ、ガイド、ポーター、コックまで含めて100人を超えることもあるという。彼らの食料、燃料などの消耗品から、通信機器といったものまで運搬物は相当なものになるだろう。これらを運ぶ役割の大部分をヤクが担っているのだ。エラいよ、君たち。頭痛くなんないの?


 約20分ほどベースキャンプでの滞在を楽しみ、午後2時15分、ゴラクシェプへ折り返すことにした。

 しかしこの後が地獄だった……。

 一向に治まらない頭痛と体のダルさで歩けなくなってしまったのだ。もうこれは完全に「高山病」。途中のアップダウンでは、十歩進んではハァハァと肩を上下させて座り込むという状態が続く。意識はしっかりしていたので、大体の歩いた距離と時間を計算し、日没までには帰れそうだということが分かった。それなら急ぐことはない。とにかく今までにも増してゆっくりゆっくりと歩いた。

 結局、往は2時間40分のところを、帰りは3時間以上かけて歩いたことになる。ロッジに戻って暖かいガーリックスープを飲みしばらく休むと、体調は快方に向かってくれた。一時はどうなることかと思ったが、明朝の体調が良ければカラパタールを狙える。

 標高5,100メートルの夜。寝袋に入る前にロッジの外にあるトイレ小屋に行った。そのときふと見上げた空は、満点の星空――。明日も晴れてくれそうだ。オリオン座と北斗七星ぐらいしか分からないのが、すごくもったいない気がした。(つづく)

2001年3月28日(水)
Wed. Mar.28 '01
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