【6日目】 ペリチェ
The 6th Leg "Pheriche"
mayugeのぬけがら |
午前7時起床。二畳程度の狭さでベニア板張り、電灯なしの、何とも味気のない部屋の気温は、この朝氷点下4.8度にまで下がっていた。どうりで寒かったわけだ。「よしゃっ」と気合を入れて寝袋から抜け出す。
朝食は「ミルクポリッジ」というメニューを注文。牛乳がゆといったところだ。これは腹にいいという。一晩ぐっすり寝たといっても、極寒仕様の寝袋の中でさえ寒さで目が覚めてしまうくらいの場所。腹の調子はすぐによくなってくれない。
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お腹すいたんだよねー、か? |
歯を磨きに外へ出ると、空は雲一つない快晴。遠くの白峰がくっきりと浮かび上がっていた。
昨夕現れたヤクたちも、まだ宿の近くでじっと突っ立っている。景色の中に溶け込んでいるようだ。
歯磨きといえば、これがなかなか大変。水は前日に残しておいた飲用水を、持参のステンレスマグカップに入れて使う。ロッジには洗面所などないので、外の適当なところに口をゆすいだ水を流すのだ。
マグカップを置いてハブラシをとりにちょっと部屋へ戻ったりすると、わずか2分の間で表面に氷が張ってしまう。カップの取っ手が氷点下の空気に冷やされて、指に噛み付くように凍っていたりもする。
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おなじ場所でもこんなにちがう |
昨日濃い霧がたち込めていたU字型の谷も、すっかり青と白が織り成す「マイルドセブンの世界」に変わっていた。
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今日は標高5,000メートル手前で断念 |
ここペリチェでもナムチェのときと同様、高度順応のためにもう一泊するのだが、この日もまた翌日のトレッキングを睨んで近くの丘に登ってみることにした。
午前9時20分、同じロッジに泊まっていたキャイサ、前夜知り合ったマイクとともに、快晴の空のもとロッジを出発。
丘をひとつ越え、さらに次の丘を登っていく。頂上まで行くと標高5,000メートルを超えるらしかったのだが、昼近くなって日が陰り急激に寒くなってきたので、4,800m付近で引き返すことにした。吹き抜ける風が身を切るように冷たい。この時点で気温計は0.4度を示していたが、実際の体感温度はもっと低いように感じられる。
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それでも高い場所だけあって、眼下に雲がたなびく素晴らしい眺めを堪能することができた。
イムジャコーラ(左)とロブチェコーラ(右)の合流点も見える |
この角度からのアマダブラムは角が二本に見える |
ペリチェへ至るまでに何度も遠くにその姿を見せてきたアマダブラム(Ama
Dablam、6856メートル)も、グッと近くに見える。その後午後0時10分、丘より下山を開始。約1時間で宿に戻ったあとは、熱いガーリックスープで体を温めた。
午後3時、軽い頭痛か出てきた。とうとうきたか、という感じだ。おそらく丘を下るペースが速すぎたからだろう。下りは当然息が楽なので、ペースは自然と上がってしまう。ペースが上がれば体は余計に運動することになる。そうすると体内の酸素が足りなくなってしまうのだ。意識的に酸素を多く摂取するような呼吸をしたつもりだったのだが、そうは問屋が卸してくれなかったらしい。
食堂で時間を持て余していると、あるガイドが声を掛けてくれた。様子を話すと、頭が痛いときは眠っては駄目とのこと。眠ると余計に痛くなるのだそうだ。やることはないし、かといって眠ることもできないし、これはサイテー。一方僕のガイド、ドゥンムラ君は、真っ昼間から酒を飲んでゴキゲンだ。解雇したいかも……(笑)。
夕方になると、今日も谷には霧が立ち込めはじめた。発泡スチロールのカスのような雪もパラつく。ああ、早く下山してあったかいシャワーを浴びたい……。体調を崩すと、思考も後ろ向きになってしまうものだ。この状況を打破しようと、カロリーメイトを腹に入れバファリンを服用する。頼む、効いてくれ……。(つづく)
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2001年3月26日(月)
Mon. Mar.26 '01 |
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