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マユゲの夏休み 〜第九章「ボルネオ!」〜



 ラバンラタで最高の一杯(この時はコーヒー)を堪能した後、9時20分、登山ゲートへ向け再び下山を開始する。日が昇り、だいぶ暖かくなってきていたため、上半身はTシャツでの下山。時おり感じるひんやりとした風が気持ちいい。

 Warm sunshine and flesh air. Umm..., good feeling!

忍者?

 草木が育つことのできる高さに戻って来ているため、下山道はまさにジャングル探検状態。するとそのジャングルをうつむきがちに登ってくる若者が。背中には馬鹿でかい荷物。そうか、彼等がポーターなのか。

 彼等は、登山客のザックを運ぶサービス(有料)や、中継基地・宿泊施設で必要な物資の運搬を担っているのだ。重さにしてヒトひとり分はあろうかという荷物を背負い、信じられない速さで登っていく。速い。メチャメチャ速い。彼等が登ってくるのを確認したマユゲがカメラを引っ張り出したときにはもう既に視界から消えようとしていた。

 すっげー。しかも驚くべきことに、履いているのはビーサン。「うおのめ」とかできないんスかね?

 しばらく行くと、ガイドさんが下山道を外れて、ジャングルに入って行こうとする。ハハーン。さてはオティッコするのね。ん? なになに、今度は違うの? マユゲに何か見せたいと言うのだ。下山道を外れるとそこは崖のようになっている。大丈夫なの、こんなとこ降りちゃって?

 手を使いながら、急坂を後ろ向きに下る。なんか触るの怖いような植物がいっぱいなんだけど……。キモチわりっ。と思っていると、ガイドさんが何かを指差している。

アンジャ、コリャ!?

 「△■○◇×▲□◆!?」

 どうやらこの植物の名前らしい。これって虫とか食うの? へー食べないんだ。なんか「this is食虫植物」って感じだけどね。ディズニーアニメなら間違いなく喋るぜ、この植物。フタ付コップ状の葉(実?)の中身は、無色透明の液体。でもホントに虫はいない。ヘンテコな生物である。

 でも、まさにボルネオって感じで感動です。ありがとね、コンちゃん。

 さらに進むと、今度は女性のポーター陣。彼女たちは見たとこ、もうおばちゃんって言っても怒られないくらいの年齢だ。

荷をおでこに引っかけ、前傾姿勢。

 すごいッス。マジ、すごいッス。俺なんか昨日、ザック背負ってるだけなのに、このあたりでハァハァ言ってたもんね。それにしてもこの運動、アメフト選手にはいいな。このトレーニングで首と足を鍛えられるもんな、なんて思ったり。

 標高が下がるにつれて、次第に雲行きが怪しくなる。霧が立ち込め、雨が降ってもおかしくない雰囲気。

うえっ。ぐっちょ、ぐちょ。

 このあたりに来ると、地面もまだ乾燥していない。昨日午後の雨でぬかるんだ地面は、足をとられて非常に歩きにくい。

雲の中を登ってくる人もチラホラ

 さっきから気になるこの霧、もしかして雲? 結構濃く白いモヤモヤが漂っているのだ。気がつけば、ラバンラタでは下界に見えた雲の中に差し掛かっているらしい。見上げると……、

雲に巻かれるジャングル。

 それにしても、下りは楽チンだ。余裕のマユゲ、すっかりペースを自分でつくっている。Let's take a break at the next shelter!

 シェルターに立ち寄るとガイドさんが何やらごみ箱をガサガサやっている。??と思って見ていると、どうやら中のゴミ入りビニールをまとめて、新しいビニールをセッティングしているらかった。各シェルターのゴミ回収も彼等ガイドの仕事だという。我々登山者から徴収する入山料などの収入によって、こういったゴミの処理費用等がまかなわれているのだろう。そうだよな。みんな何かしらゴミを出していくんだもんな。どこかで聞いた話では、エベレスト登頂のベースキャンプなんて捨てられた酸素ボンベだらけなんだって。登る奴はゴミにも責任もたないとな。はい。自分にも言い聞かす。

 登りに比べ、ずっと短い休憩ののち、再びスタート。しばらく歩くと、なんとボルネオのジャングルまで来てわざわざケンカしている若い中国人カップルがいた。あまりにも熱い状態で歩いている彼等を抜き去れずに、気まずいながらも少し距離をおいて着いていく。二人とも早口の中国語なので何を言っているのかは分からないが、雰囲気では、
 「あんた、ちょっと歩くの速すぎんのよ。レディと一緒だってこと分かってんの?」
 「お前が登りたいって言ったんだろ?だからこうして連れて来てやったのに、その言い方か!」
 「ったく、何でも大きい声出せばいいって、思ってんのよね。だから馬鹿な男と一緒にいると疲れんのよ」
 「なにをぉぉ!このアマぁー。もういい、勝手にしろっ。俺は先に行くからな。」
ってな感じかな。

 男は女を置いて、スピードを速めた。女は立ち止まり、腰に手をやりながら男の背中を見送る。スイマソン、横、通ります。マユゲがすまなそうに抜き去りながら、ちらっと女を見ると、頭のてっぺんから湯気が出ていた(ように見えた)。おいおいー、二人とも冷静になろうよ。せっかく来たんだからさー。仲良くやんなよ。しかし男も、もうちょっとやさしくしてやりゃーいいのにな。

 でも、男は先で待っていた。マレーシアの風が男の熱くなった頭を冷やしたのか、やや心配げな顔である。なんだよ、こいつら。分っかりやすいなー、もう。昼ドラじゃないんだからさ。ベタすぎだろ? マユゲが予想するこの後のパターン。

(その1)
 むくれっ面で降りてくる女、待っている男が目にとまる。男は照れくさげに宙を見上げている。女は駆け寄りたい衝動を抑え、口を尖らせたままで男のもとへ。
 男「ごめんな」
 女「知ーらないっ」

(その2)
 心配そうな顔だった男、降りてくる女を認めると、厳しい表情に戻る。女も男の姿を見つけ、一瞬表情を崩すが、すぐにすまなそうな顔になり、ゆっくりと歩み寄る。
 男、近づいてきた女に背中をむけ、「行くぞ」とだけ一言。
 女、額を男の背中につけ呟く。「ばか……」。
 そして両手をまわし、男を後ろから抱きしめる。

(その3)
 やさしい表情をたたえた男、両手を広げて女を迎え入れる。駆け寄る女。そして女は、その勢いで男を思いっきりブン殴る。「ざけんじゃないわよ」。

 まあどれでもいいや。勝手にして。マユゲは歩を進める。すると途中で道が合流するポイントがあった。このあたりまで来ると、SUMIT TRAIL(登頂)以外のトレッキング用の道があるのだ。欧州のオジちゃん・オバちゃんグループがワイワイと歩いている。

トレッカーは軽装備。

 とうとう下まで降りてきたな。じきに滝が見えたら、ゴール(ティンポホン・ゲート)まではもう僅かだ。

滝ではマイナスイオンをたっぷり浴びる。

 登山ゲート到着。時計を見ると11時40分。ラバンラタから2時間20分か。やっぱり下りは相当早い。本格的に降り出した雨の中、充実感に満たされたマユゲはシャトルバスにのって公園管理事務所へ。ここで、預けていた荷物を受取り、着替えと荷物の整理。さすがボルネオ、トイレで着替えて出てくると外はすっかり晴れていた。

 するとガイドさんがなにやら表彰状のようなものを持って来てくれた。おー、そうか。ラバンラタでお願いしておいた登山証明書だ。証明書には2種類あって、5RMの通常タイプと、10RMでカラーのミレニアムバージョンタイプだとか。うーん、せっかくだから、ミレニアムバージョンでしょ。まんまとキナバル公園管理事務所の商売にのってしまうマユゲだったが、こうやって見てみるとこっちにしておいて良かった。なかなか立派な賞状です。

 英語で、MR.KENJI ABE(タイプ印字)は確かにキナバル山頂を極めました、みたいなことが書いてある。正直、うれしい。いや、ホントに。自然と笑みがこぼれる。

 すかさず同じシャトルバスで到着していた金髪のおネーちゃんにシャッターを頼み、ガイドのコゥンギンさんと記念撮影。

コンちゃん、カメラあっち。

 本当にお世話になりました。辛かったし、おいしかったし、びっくりしたし、寒かったし、楽しかったし、うれしかった。思い出にと、ネタ帳にサインをお願いし、アドレスの交換をした。ずっと一緒だっただけに、お別れはやはり淋しい。

 「おかげで無事、東南アジア最高峰を極められたよ」。ちょっとおセンチモードのマユゲ。ありがとう、またいつか――。(おわり)
2000年8月16日(水)

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