文●阿部憲二
Text / Kenji Abe
|
|
◇11月後半のハイライト◇
さすが強豪、地力の差か…
3勝6敗と黒星先行で迎えた第11週、シーホークスは地元でデンバー・ブロンコスと対戦。
第11週◇11月17日(日)◇シアトル |
シアトル
シーホークス
(3勝7敗)
|
9 - 31 |
デンバー
ブロンコス
|
|
4年前、スターQBエルウェイを擁してスーパーボウル(全米王座決定戦)を征した強豪は、今季もこれまで7勝と好調だ。格上相手に前半こそFG(フィールドゴール)1本に押さえる健闘を見せたシーホークスだったが、ブ軍はやはり一枚上手。結局31対9の大差で惨敗、またまたフラストレーションのたまる日曜となってしまった…。
この粘りが見たかったわけよ
翌第12週は、カンサスシティー・チーフス相手に前週のうっ憤を晴らすかのような戦いぶり。
立ち上がりに10点を先行されて迎えた第2Q(クオーター)。QBハッセルベックが、この日怪我から復帰したエースWRジャクソンへパスを投じた際、相手守備の反則「パス・インターフェアランス」(*1)を誘い一気に41ヤードを前進。これを機にWRロビンソンへのロングパス、RBアレクサンダーのTD(タッチダウン)ランが決まり反撃ののろし。
第12週◇11月24日(日)◇シアトル |
シアトル
シーホークス
(4勝7敗)
|
39 - 32 |
カンサスシティ
チーフス
|
|
直後にTDで突き放されるが、この日のシーホークスはここで諦めない。続く攻撃シリーズはジャクソンへのパス、アレクサンダーのランなど両エースの活躍で計79ヤードをドライブしてTD。さらに前半終了間際の攻撃もQBハッセルベックが冷静なプレー運びでTDに結びつけ、17対21と逆転に成功する。
後半に入ってもFGなどで着実に加点したシーホークスは、追いすがるチ軍を32対39で振り切って今季4勝目に漕ぎつけた。
あのプレーが明暗を分けた…
続く12月1日の第13週は敵地サンフランシスコでの49ers戦。
第13週◇12月1日(日)◇サンフランシスコ |
シアトル
シーホークス
(4勝8敗)
|
24 - 31 |
サンフランシスコ
49ers
|
|
いつもの「追う展開」で迎えた第3Q、WRジャクソンへの36ヤードTDパスで24対10とTD2本差まで迫る。しかし続いての攻撃シリーズでWRジャクソンがロングゲインした際、敵エンドゾーン手前6ヤード付近で痛恨のファンブル。試合巧者の49ersは直後の攻撃シリーズで94ヤードを前進、確実にTDへ結びつけ突き放す。
第4Q、シーホークスも2つのTDを返すが、そのときの失点が響いて31対24の惜敗…。QBハッセルベックはこの日、1試合のパス獲得距離の自己最高427ヤードを記録したが、チームの勝利に結びつけることはできなかった。
|
◇今後の見どころ◇
第13週を終えて4勝8敗、残り試合数は4。対戦相手はイーグルスやチャージャーズなど、各地区で優勝争いする強豪が揃う。しかもワイルドカード(*2)でのプレーオフ出場を争うNFCのライバルは、すでに2チームが8勝を挙げている。つまり彼らが残り試合で1勝でもすれば、その瞬間シーホークスのプレーオフ出場は消えてしまうのだ。
今シーズンの戦況は絶望的だが、来季を視野に入れて観戦すれば、まだまだ盛り上がれるというもの。QBハッセルベック、RBアレクサンダー、WRジャクソン、ロビンソンといったオフェンスの中心選手は、NFL経験2〜4年目という若手。そしてヘッドコーチは若手育成に定評のあるマイク・ホルムグレンだ。この太っちょのヒゲオヤジ、実はグリーンベイ・パッカーズを率いていた96、97年に、当時若手だったQBファーブを擁して2年連続スーパーボウル出場へ導いた名将なのだ。ファンとしては、今季の不振で彼が解任されないことを祈るばかり…。
|
◇注釈◇
(*1)パス・インターフェアランス…反則のひとつ。前に投げられたボールが空中にある間は、攻守どちらの選手も、相手に手を掛けたりぶつかったりして捕球の邪魔をしてはならない
(*2)ワイルドカード…AFCとNFC、2つのカンファレンスでそれぞれ4地区の優勝チーム以外に、各カンファレンスで勝率のいい2チームずつがプレーオフに進出できる。この枠が「ワイルドカード」。
|
|
|
第3回: パス攻撃の仕組み 「パス・プロテクション」
|
「男」の仕事
アメフトの攻撃陣には、華やかなバックスの陰で地味な役割をこなす「オフェンス・ライン」という男たちがいる。プレーの始めにボールをQBに渡すC(センター)と、それを囲むG(ガード)、さらにその外側に位置するT(タックル)のことだ。
パス攻撃時の彼らの役目は、QBめがけてラッシュしてくる守備選手たちからQBを守ること。それが「パス・プロテクション」。敵選手が近くまで襲ってきた場合、QBにはプレッシャーがかかる。そこで投げ急いでコントロールを失うと、レシーバーへうまくパスが通らないだけでなく、守備の選手にインターセプトされる危険性も高まってしまう。パス・プロテクションという仕事は目立たないが、とても重要な役目なのだ。
|
|
(Oops! Japanese Magazine 2002年12月上旬号掲載記事)
|