mayugeのダラダラ放浪紀 ここがホントにヨーロッパ文明発祥の地 !? ギリシャ (Greece)

「イドラ島」篇  (Hydra)


 島から島へ

 6月5日(火)朝、アテネ近郊の港街ピレウスに到着。前夜のサントリーニ島からの出発時、天候はやや荒れ模様であったが心配していた船の揺れは感じられなかった。やはり大型船は安心感がある。

 しかし船内の混みようはすざまじかった。予定出発時刻より一時間以上遅れてフェリー「POSIDON号」が到着するや、待ち構えていた乗客が一斉になだれ込む。船内デッキでは超アナーキーな「"大"椅子取り合戦」が繰り広げられた。もちろんマユゲも一選手としてそれに参加。興奮した西洋の老若男女にまじって悪戦苦闘する。ここで幸いしたのは独り者だということ。グループの間で半端に空いた椅子を見つけるや、すかさず左右の人に確認、なんとか席を確保した。依然として続く椅子取り合戦"ファイナル"を尻目に、買い込んだ食糧袋を手に軽く腹ごしらえを決め込む。デッキ内の椅子は、日本の駅にあるベンチのようなプラスティック製のもの。じっと座っていられるのも一時間が限度のところを、お尻の位置をずらしながら必死に我慢すること数時間。船内も就寝のムードとなったところで目を閉じる。ちょっと眠ったかと思ったら尻の痛みで目が覚める、というパターンを何度も繰り返し、ようやくピレウスのグレート・ハーバーと呼ばれる港に到着したというわけである。

 グレート・ハーバー周辺は平日朝の活気がみなぎっていた。通勤のギリシャ人たちが行き交う中、マユゲはそこからは少し離れたもうひとつの港、ゼアマリーナに向かう。地図で見るとその距離約三キロと、かなり歩き応えがありそうであったためバスを探してみたのだがいまひとつ要領を得ず、結局バックパックを背負って踏破してしまった。距離に加えて丘をまるまるひとつ越えるその行程、睡眠不足の体には少々こたえた。ゼアに着くやいなや、朝から元気いっぱいで照り付ける太陽の光を避け木陰で一休みと相成った。


 さてこれから何処へ向かうかというと、またまた島である。ここピレウスから首都アテネまでは電車で三十分ほどの距離なのだが、まだ首都入りはせずに再び海へ繰り出す。今度向かう島はイドラ島。サントリーニからは直行する便がないためこうしてピレウスを経由したというわけだ。

 休憩ののち、高速艇のチケットを買ってピレウスのゼアマリーナを後にする。ピレウスの周辺に点在する、サロニコス諸島と呼ばれる島々を経由しつつイドラ島を目指す。エギナ島、ポロス島の次がイドラ島だ(その先、船の終点はスペツェス島)。フライイング・ドルフィンと呼ばれる水中翼船はとにかく速い。約一時間半ほどで目的地イドラ島のイドラ・タウンに到着した。

 船を降りると、再び目も眩むような太陽光線の歓迎に出会う。網膜の「明順応」が完全に終わりきらないうちに視界に入ってきたのはホテルの客引きたち。そのなかに一人の老女がいた。白地にブルーの柄が入ったノースリーブのワンピースを上品に着こなす、痩せた白髪のおばあちゃんである。彼女は真っ直ぐにマユゲのほうを見ている。何何? 何処かでお会いしましたっけ? しかしそんなはずもなく、実は誰か他の人を見ているのではないかと後ろを振り返るが、特に誰もいるわけではない。やはり俺を見ているんだ。そんなことを考えていたら、おばあちゃんはツカツカと近寄ってきて、さあ、いらっしゃいとばかりに手招きすると、くるりと背中を向けて歩き出すではないか。ちょっと待ってよと思わず後を追う。完全に彼女のペース。でも人の良さそうなおばあちゃんだ。とりあえずその宿を見るだけ見てみようじゃないか。こうして旅先でのインスピレーションに身を任せてみることにした。

 そのホテルは港から山のほうへ四、五分歩いた閑静な住宅街にあった。門をくぐると涼しそうな木陰のある中庭。おばあちゃんの娘さんだろうか、四十歳前後のご婦人が出てきて部屋を案内してくれる。どうやらおばあちゃんは、船が着く時間になると港に繰り出し、下りてくる客の中から宿もとらない気ままな旅行者を直感で見つけ出し、その瞳で射落としてくるのが仕事なのらしい。採光用の小さな窓がついたその部屋は、シンプルだが清潔でそれなりに快適そうである。シャワーも部屋に着いている。料金もまずまずだ。この際、おばあちゃんに射止められるとするか。


ここでもやっぱりグリークサラダ
 荷物を降ろすとお腹が空いているのに気づく。そういえば昨夜船の中で食べたっきりか。昼には少し早いがさっそくランチと行きますか。ホテルを出て石畳の細い道を一分ほど歩いたところにタベルナを発見。店の前には、葡萄の蔦がちょうど天井のようになっている涼しげな空間がある。そこに白いクロスが掛かったテーブルがいくつか置かれているところを見ると、どうやらこのちょっとした広場をテラスとして使っているらしい。これは気持ち良さそうだ。

 腰掛けてまず注文したのは、やっぱりビール。この気候、この雰囲気、実に自然な流れである。そして食べたくなるのがグリークサラダ。地中海の太陽を浴びて真っ赤に熟したトマトに胡瓜の歯ごたえもまた楽し。オニオンスライスとブラックオリーブも控えめながらしっかりと存在を主張する。そして何よりこってりした山羊のチーズ。これは病みつきになる。全体を調和させるのが本場のオリーブオイルだ。もう駄目、デブになりそう。パンは限りなく出てくるので、後は小さめの白身魚を一匹焼いてもらって充分満足。しあわせー。

日陰にいるのは頭だけ

「限りなく透明に近いブルー」
 食後はイドラタウンを散歩。白壁が印象的な石造りの家々と真っ青な空。程よく酔いも回って、天国にいるようだ(それらの写真は特集「イドラ島の風景」で篤とご堪能ください)。
 こうしてイドラ島での三泊四日のんびりステイが始まったのであった。

 げげっ! 全身、ブツブツだらけ!

 しかし、ちょっとしたトラブルも。朝起きて着替えをしようとして度肝を抜かれた。全身に赤い発疹が無数にできているのだ。その数おおよそ百以上! アンジャゴリャアアア? 蕁麻疹(じんましん)? それとも蚊? 確かに窓を開けっ放しで寝ていたからな。でもこんなに刺されて気づかないものか? そういえばヘッドフォンでMD聞きながら眠っちゃったんだよな。それで気づかなかったのかも? 参った。これじゃ病人だよ、トホホ……。岩場のビーチで甲羅干しをしていてもなんだかちょっと恥ずかしいくらい。

 そこでマユゲはイドラ島内の医者に診てもらうことにした。三十分もあれば街中を歩いて一周できてしまうようなイドラタウン。街の人に尋ねながら医者を探す。教えてもらった通りに行くとそこには薬屋。これは近い。そこで聞いてみればやっぱりBingo! すぐ近くに医者はあった。看板が出ていないので分かりにくくはあったのだが。

 ギリシャ人のお医者さん、症状を見ながらマユゲの説明をひと通り聞くと、片言の英語で質問をしてきた。「頭はかゆいか?」。頭はかゆくないというと、マユゲの髪の毛をかき分けて頭皮を調べ出す。そして一言。

 「モスキート」

 どうやら蚊であったらしい。何か食べ物に当たって湿疹が出るとしたら頭にも出るはずだという。なるほど。そして彼はスラスラと処方箋を書いてくれ、これを持って薬屋に行けという。塗り薬と飲み薬が出るらしい。ありがとうございました。ほっとしました。礼をいって立ち上がりかけると、お医者さんは何やらモジモジしている。あっ、そうか。お金払わなきゃ。幸い診察料はあまり大きな出費にならなくて済み、薬のほうも財布にあった金でことが足りた。


その名も「蚊獲る」
 まったく俺ときたら何処へ行っても虫に好かれるな。困った体質だ。そこでマユゲは宿への帰りにスーパーマーケットに立ち寄った。お目当てはもちろん虫除け。 すると何と蚊取り線香もしっかり置いてあるではないか。

 こうして、この夜からは「畳・浴衣・うちわ」が似合いそうな香りのなかで眠ることとなったのであった。
 またまたビーチ三昧


タクシーボートの運ちゃんは「通話運転」

タクシー降り場

ヴリオス・ビーチ、おすすめです

とにかく透明度がスゴイのよ……
 おかげさまで薬の効果はすぐに現れた。翌日、翌々日と日を重ねるにつれ、みるみる湿疹の数が減っていった。やはり科学の力、おそるべし。

 というわけで、イドラタウンからタクシーボートに乗って別のビーチにも足を延ばしてみた。ここイドラ島はどこのビーチも海岸から近くに山があるために車で移動するより、海岸線沿いにボートを飛ばしたほうが早いのだ。まさにタクシーの要領で客を目的地まで運んでくれる。こうして、さらに人の少ないのんびりしたビーチで最高のバカンスを楽しむことができるわけなのである。

 帰りのタクシーボートはヨーロッパの貴婦人と相乗り。どう見ても連れではなさそうな二人で「私たちは一緒のグループだから別々に払わないわよ」と言い張り、ワリカンに持っていった。サンキュー、奥さん。

 イドラ島。ここも将来また訪れたいところだ(もちろん次は二人で)。
2001.06.08 イドラ島 にて

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