mayugeのダラダラ放浪紀 頭巾ちゃんの誘惑、マレーシア (Malaysia)

「ペナン〜ランカウィ」篇 ( from Penang to Langkawi )


リゾートアイランド、ランカウィへ

 2001年3月5日(月)午前6時30分、四泊したペナンを離れ、予定変更で旅程に加えたランカウィ島に向かうべくホテルを出る。この時間でもあたりはまだ真っ暗。ホテル前に待機するタクシーやトライショーの運転手もシートで寝ている。近くのコンビニで豆乳とパンを買い、道端のベンチに座ってパクつく。今日の船で二時間半の行程が待っている。船酔いの可能性もあるので、朝食は軽めにしておこう。

 すると通勤前といった感じのマレー系のおじさんが横で体操を始めた。さすがにラジオはなかったが、やっぱり朝は体操から始めたりするのね。おじさんはマユゲの姿を認めると話し掛けてきた。これからペナンを出発するというと、「どうだい、楽しかったかい?」とペナンの感想を聞かれた。ゆっくりとしたペースで進む部分が残っていていいですねというようなことを答えると、おじさんは微笑みながら、そうだろう、そうだろうというように何度かうなずいた。彼は「どうぞまたいらっしゃい」と言い残し、体操してエンジンのかかった体で元気に通りを渡って去っていった。

 朝食を食べおわると、近くにいたトライショーの運転手と交渉し乗車。ランカウィへの船が出るスウェッテナム桟橋へ向かう。この運転手は中年に差し掛かったくらいの年格好で、前回乗ったおじいちゃんのトライショーの三倍はあろうかというスピードで、まだ暗いジョージタウンの街中をガンガンこぎ進んでいく。まだ排気ガスが立ち込めていない朝の空気がおでこをなでて気持ちいい。そしてものの10分で到着。おじさんは汗ひとつかいていなかった。さすが働き盛り。

 スウェッテナム桟橋からは、ランカウィ以外にもインドネシア・スマトラ島の都市メダンに向かう船も出ている。まだ薄暗い時間でもすでに乗船待ちの客が待合室にひしめいていた。

 午前7時15分頃、ランカウィ行きのチェックインが始まった。チェックインといっても待合室から桟橋へ移動するだけなのだが。桟橋に出るとあたりはやや明るくなり始めていた(写真右)。

 すでに桟橋の左右の端にはそれぞれ船が停まっている。案内は特になかったので、とりあえず右の方が人の動きも多く何か分かりそうだったので、バックパックを背に100mほど歩いていってみる。

 船の入り口にいた係員にチケットを見せるが、桟橋の反対側を指差された。どうやらこちらの船は違う船会社のものらしい。再度バックパックを揺らしながら反対側へ200mほど歩くと、こちらの船ではすでに乗船が始まっていた。

 マユゲもチケットを見せて無事乗船。船内は2フロアになっていたが下の階の一番前に陣取る(写真右)。

 船は出発予定時刻である午前8時を少し過ぎた頃に港を離れた。左手にジョージタウンの半島、右手にマレー半島を見ながら、船は快調にスピードを上げる。かなりの速さだ。時速60kmくらいは出ているんじゃないかと感じた。時折、前方からの波を食らって船がポンピングし、船底からガゴーンという水と鉄がぶつかり合う爆音が聞こえてくる。大丈夫なのかね、強度は。隣に座っていたドイツ語を話す熟年夫婦も、同じことを考えたのか急に黙って前方を見つめる不動の姿勢になってしまった。

 ペナン島が見えなくなると、こんどは大きな船が航海している様子が視界に入ってくる。ここの水道も交通量が多そうだ。新鮮で楽しかったのはその当たりまで。その後一時間も海面だけの景色を見ていると眠くなってくる。そしてウトウトしかかった頃には、船はスピードを落とし桟橋に接岸し始めた。

ランカウィで日本語を楽しむ

 船の窓から覗くとランカウィ島ジェティ名物、イーグルのモニュメントが見えた。間違いない、ペナンでゲットしたランカウィ・マップにある写真の通りだ(写真右)。予定通り約二時間半の行程。午前10時40分にはランカウィ島のジェティに降り立っていた。

 船を降りるとまた客引きの嵐。タクシー? ホテル? とりあえずはちゃんとしたものを腹に入れてから考えよう。ジェティの建物内にあるKFCに入って二度目の朝食。

 ここで日本人らしき若い男の子二人組と遭遇。食べ終わったマユゲが立ち上がったときに、ちょうど近くに座っていたのだ。この後ジェティからビーチまでタクシーで行って宿を捜そうと考えていたマユゲは、タクシー代のシェアを思い付き声を掛けてみた。すると彼らもマユゲが向かおうとしているのと同じパンタイ・テンガーというビーチに宿をとっているらしく、「あー、いーっスよ」と快く了解してくれた。聞けば二人は東京のそれぞれ別の大学に通う学生さん。高校野球部時代の同級生だとか。真っ黒に日焼けしたほうの彼は旅慣れた感じのしっかりクン。もう一方の彼は、真っ「赤」に日焼けし無精ひげをはやしたひょうきんクン。ふたり合わせて東京サンダル1号2号といった感じ。ここではしっかりクンを1号、ひょうきんクンを2号と呼んでおこう。「今回の旅が"初飛行機、初海外"なんスよー」という2号は、ペナンのビーチで頑張りすぎたらしく熱中症の状態にあるといい、前日の夜からここランカウィに来るまで、上下からの水分放出に悩まされていたという。2号を気遣って薬を分けて欲しいという1号の呼びかけに、マユゲも当然答える。さすが1号、しっかりしとるねぇ。

 そして二人とともにタクシーでパンタイ・テンガーへ向かう。助手席に座ったマユゲは、退屈凌ぎに若いタクシーの運転手がかけている音楽について聞いてみた。それはマレーシアのポップスらしかったのだが、我々が日本人だと分かると彼はジャパニーズミュージックのカセットテープを取り出して見せてくれた。SHE...?どのアーティストだかさっぱり分からない。こんな人知らないなぁと言うと、彼はとりあえずかけてみるからとばかりにカセットをデッキにぶち込む。そして何が聞こえてくるかと思えば、工藤静香の「激情」。一同、大拍子抜け大会。そこで運転手に日本の有名な俳優・歌手、キムラタクヤは知っているかと聞くと、Yesとうなずく。これを歌っているのは、彼のワイフだと教えてあげると、意外にも「ふーん」という程度の反応。お前、ホントにキムタク知ってんのか!?

 そんなこんなで約30分、タクシーはパンタイ・テンガーの1号2号が予約してあるバンガロー前に到着。
二人とはここで一度さよならをし、マユゲはビーチ沿いに宿探しを開始する。しかし4〜5軒あたってみたものの、結局彼らと同じバンガローが一番安かった。ここで今回は三泊することにし、さらにディスカウントもしてもらった。そしてもうひとつ気になることを受付の頭巾ちゃんに聞いてみた。憎き"マスキーローズ"(蚊)である。やはりここにもいるらしく、モスキート・ネット(蚊帳)も貸し出してもらうことにした。

 マユゲのバンガローはビーチからは30mばかり奥まったところにあり、木陰もあったりしてのどかな雰囲気。近くのバンガローのあいだからは、エメラルドに輝くマラッカ海峡の海が覗ける(写真右)。いーじゃない。安安のバンガロー生活だけど、立派なリゾートだよ、これなら。

 近所にあるスーパーへ買い出しに行ってから、さっそくビーチのほうへ歩いてみる。すると向こうから真っ黒に日焼けした日本人らしき若い女の子が一人、するどい目をして歩いてくる。こんなとこまで来て彼氏とけんかでもしたんかねと思いつつも、何気なくこんにちはと挨拶すると、彼女は目を見開いて「日本のかたですかー!?」 そして「マレーシアのガイドブック持ってませんか?」といきなり聞いてきた。そこでマユゲはバンガローに戻り、東南アジアについてのガイドブックからマレーシアの部分だけを破いて持ってきていたものを見せてあげた。聞けば彼女も東京の女子大生で、タイを一人で旅行してきたのだという。しかしカンボジアのアンコールワットを見に行くべくバンコク・カオサンロードの旅行代理店で手配をしたところ、その代理店に夜逃げされアンコールワット行きがパァになってしまったとか。結局お金は返ってきたらしいが、もうタイなんて大嫌いと、思わず船でマレーシアに渡ってきてしまったらしい。彼女もまたこのバンガローに宿泊しているとのこと。

 あらあら、ランカウィのとあるビーチで同じバンガローに日本人が四人も揃っちゃったよ。
彼女の経験談を、大変だったねぇーといった感じで聞いていると、先ほどの1号2号が食事からちょうど帰ってきた。

 そこでマユゲのバンガロー前にその四人が集まって、しばらくみんなで日本語大会。そして記念撮影も(写真右:左から1号、マユゲ、タイ嫌いちゃん、2号)。

 こんなに日本語で会話したの久し振りだな。

 彼らは、大学の単位をもういくつとったとか、俺はまだこれしかとってないとか話している。気がつけば、マユゲにとって「単位」とかっていうのものは、もう10年近く前の話になってしまっていた。時が経つのは早いものよのぅ。

 話していて分かったのが、1号はマユゲの大学・学部・学科の後輩であること、2号は教職コースを進んでいて先生になろうとしていること、そしてタイ嫌いちゃんはマユゲもなじみのある女子大に在学中で、東京都町田市在住ということ。こんなところにご近所さんがいるとはねぇ。

 話し込んでいて時間が経つのを忘れていたが、気がつけば水平線がキラキラと光を放ち始めていた(写真右)。そう、ここパンタイ・テンガーはランカウイ島最南西部にある西向きのビーチ。サンセットを臨むには最高のロケ−ションなのである。この日は雲がかかって夕陽は見えなそうだったものの、こぼれてくる光が海面に反射し、とても神秘的な光景を創り出している。

 息を呑むとはまさにこういうことなのだろう。マユゲはその神秘的な力に引き込まれ、ただ黙ってしばらくその光景を見つめていた。

奴等の時間

 彼ら三人とはこの日の夕食もともにした。さらに、七ヶ月間も一人で各国を旅しているというイギリス人のきれいなご婦人も同席し、なんと五人という大人数での食事を久々に楽しむ。ここでは、初海外の2号をいかに一人立ちさせるかという話題で盛り上がった。タイ嫌いちゃんから、タイのビーチにはトップレスの女性が大勢いるということを聞いた2号は興味深々。バンコクに戻った後カンボジアに向かう予定の1号とここランカウィから別行動にし、タイのビーチへ一人で行ってみたらどうかとタイ嫌いちゃんと1号でけしかけるものの、やはり2号はバス・列車のチケットや宿をとったり食事をしたりするのが一人では不安な様子。「でもトップレスは見たいしなー。」一同、大笑い。結局2号は、一晩よく考えてみることにしたようだった。

 そして、楽しかった食事を終えそれぞれのバンガローへ戻る。マユゲはさっそく昼間のうちにセットしておいた蚊帳が機能しているかをチェック(写真右)。こういった南の国では、基本的に昼間は蝿、夜は蚊に悩まされるのだ。

 切れ目の入った入り口からすばやく中に入り、端に隙間がないことを確認した後、耳を清ませる。しばらく目と耳に全神経を集中していたが、どうやら一縷の隙もないようだ。よしよし、これで今日は快眠だぜ。
 すると天井付近から「キュッキュッ!」という泣き声が聞こえてきて、一瞬ドキっとした。上を見ると、いました、また別の生き物ちゃんが……。

 ヤモリです(写真右)。

 その鳴き声は、一匹のヤモリがもう一匹のヤモリに対して縄張りを主張して噛み付いたときの音のようだった。よくよく耳を清ますと、バンガローの外からも同じような鳴き声が聞こえてくる。お隣のバンガローでも同じようなことが行われているわけね。

 彼らも蚊と同じく夜行性で、昼間はほとんどその姿を見せない。また、ヤモリは「守宮」と書くぐらいだから、その家を守る"護り神"的に思われているらしい。でも俺、守ってくれって頼んでないんだけどなー。ゲテモノ嫌いのマユゲは、ヤモリを見上げ「絶対降りてくるなよー」と声を掛けながら歯磨きをし終えると、灯りを消してササッと蚊帳の中に入った。暗闇の中からは時折「キュッキュッ!」という奇怪な声が聞こえてくる。

 そう、これからは彼等の時間なのだ。


2001.3.5 ランカウィ島  TANJUNG MALIE  Bungalow No.8にて

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