mayugeのダラダラ放浪紀 「世界一有名な具合の悪いライオン」の国、シンガポール ( Singapore )

「シンガポール」篇 その2 ( Singapore・U)


ホーカーズの虜(とりこ)

 2001年2月26日(月)、今日はシンガポール最南端にある小島、セントーサ島に行ってみよう。

 ホテルの受付に置いてあったパンフレットによると、何やらいろいろとアミューズメント施設がある島らしい。そしてここには「The Merlion」というどでかいマーライオンが立っているとのこと。何、何? マー蔵とマー小僧以外にも、ここシンガポールにマー一族がまだいるだと? それは聞き捨てならん。
Double decker
 というわけで、ホテル前からバスに乗り込む。シンガポール市街を走るバスは、路線によってはダブル・デッカー(二階建てバス)の場合がある。セントーサ島への入り口、ワールド・トレード・センターへ行く路線はまさにドンピシャ。しかもそのダブル・デッカーはすぐにやってきた。

 さっそく二階に上がった「オノボリさん」マユゲは、横からの突風が吹かないことを祈りつつ、記念に一枚(写真右)。バスは市街を抜け、約20分ほどで南のはずれにあるワールド・トレード・センターへ到着。ここからセントーサ島へは、ケーブルカーが通っているのだ。

 ケーブルカーに乗るべくバスから降りて歩いていくと、またもや「ホーカーズ」を発見。今日は出発が遅かったこともあって、そろそろ昼飯どき。ちょっと早いかなとは思ったものの、アミューズメント島では、食費も高かろうということで、ここで食べていくことにした。

 今日は月曜日。ホーカーズ内は、ワールド・トレード・センター周辺で働いているのであろうビジネスマンやOLたちで賑っていた(写真右)。その中を、毎日が休みの不届き者マユゲはやや控えめに一周してみる。ここもやはり各種料理があるぞ。

 インド料理のスパイシーな香りに誘われるな。でも待てよ、麺も捨て難いよな。いやいや、今朝がホテルの西洋風ビュッフェだったから米食いてーな、などど贅沢な悩みで右往左往しかけたが、結局一番最初に見たマレー料理屋に決定。

 本日のメニューは、ナシ・アヤム(胡瓜とスープ付)&ミックスフルーツ・シェイク(写真左)。〆て、S$3.40(=約231円)也。これまた安い(涙)……。

 ご存知の方も多いかと思うが、ここで簡単にマレー料理についておさらいしてみよう。主食の米は、「ナシ」という。麺は「ミー」。鶏は「アヤム」。これに料理の仕方を表す言葉がついてメニューになっていたりするわけだ。代表的なのは「ゴレン」。焼いたり唐揚にしたりしてある状態のこと。なので、「ナシ・ゴレン」は焼飯、「ミー・ゴレン」は焼きそば、「アヤム・ゴレン」は鶏の唐揚、「イカン・ゴレン」は魚の唐揚となるわけ。じゃあ、マユゲが食べているこの鶏の唐揚のせご飯は「ナシ・アヤム・ゴレン」じゃないのか?と怒られても、僕もガイドブックの請売りなのでワーカリーマセーン!?

"マー"一族、第三の男
Ticket to Sentosa island
 さて、軽めの昼食を済ませたマユゲは、ケーブルカー・タワーの一階にあるチケット売り場へと足を進める(写真右)。案内板を見ると、どうやらこの島全体がアミューズメント・パークとなっているらしく、入島料とケーブルカー往復代にプラスして、島内にある各種アミューズメント施設利用料をセットにした、いくつかのパターンのセット・チケットが売られていた。しかしどれも余計なのが入っていて高いので、マユゲはつましくバラ買い。プラスしたのは、何といっても「ザ・マーライオン」と、ちょっと気になる「アンダーウォーター・ワールド」のみ。これでもS$32.90。昼飯の10倍近いわけだ。食事が安いのか、娯楽が高いのか。。。まだこの国の物価が分からない。
Cable car
一階のチケット売り場横のエレベーターを上がると、そこはもうケーブルカーの乗り場。四人乗りのコンパートメントに中国系の男の子二人組と同乗したマユゲは、途中彼ら二人の記念写真を撮ってあげたりしつつ窓からの眺めを楽しむ。

 島へ向け、大きなフェリーの上を越えていく(写真右)。

 高い位置なので、後ろを振り返るとシンガポール市街の摩天楼も見える。
"The" marlion
 そして前方には巨大な石像のようなものが現れた!

 ヤツか!?

 ケーブルカーを降りて近づいてみると、それはやはりヤツであった。はるかに見上げるほどでかいマーライオンが立っている。しかも、顔が"マー蔵"よりもライオンらしくてハンサムである。さすがに「ザ」がつくだけのことはある。でもアミューズメント・パークにこんなのができちゃったら、"マー蔵"の立場はどうなるんだ? この「ザ」は、京都の生八つ橋によくある、「元祖」とか「本家」みたいなものなのだろうか。

 ここではこの「ザ」がつくほうを、仮に"マー大将"と呼んでおこう。この"マー大将"足元にある入り口には案内板があった(写真右)。それによると内部にはエレベーターが内蔵されていて、口の中や頭の上に登れるらしい。


 それでは、とさっそく体内へ進入。すると暗闇の中で、いきなりこびとが話し掛けてくる(写真左)。3Dの映像だ。ここではマーライオンにまつわる伝説を紹介しているらしい。ちなみに入り口にあったパンフレットによると……

「シンガポールは、かつてテマセク、海の町と呼ばれていました。その昔、テマセクは暴風雨に見舞われたことがありました。テマセクの村の人々は、恐れおののきながら一ヶ所に集まり、南の海に現れた不思議な光景に見入って助けを祈っていました。すると、上半身がライオンで、下半身が魚の形をした巨大な海の生き物が虹色の海の中から現れたのです。大きなうなり声とともに、その巨大な生き物は荒海と戦いました。すると次第に風がおさまり、暴風雨が止んだのです。尾を翻してマーライオンは海へ帰っていきました。今日でも私たちは、この不思議なマーライオンを見ることができます。マーライオンはセントーサ島の丘に腰を据えて、シンガポールを見守っています」

 ふーん、そうなんだ、っておいおい。じゃあ、"マー蔵"の立場はどうなっちゃうのよ。さらに読んでみると、この"マー大将"、なんと夜は目からレーザー光線を放ってショーを盛り上げるという。これって、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)に巨大なグリコの万歳男がにしきの彰みたいな服着て立って、パンフレットに「大阪のグリコといえば、ここUSJです。」って書いてあるのと同じようなもんちゃうの?
View from the mouth of The marlion
 アミューズメント・パークの勝手な言い切りと「本家」をかえりみない演出に、ちょっと"マー蔵"を心配しつつも、とりあえずエレベーターで上がってみる。そこから螺旋階段を降りると、口の中へ(写真右)、
View from the top of The marlion
 上がると頭のてっぺんへ行けるようになっている。マユゲもてっぺんから南の海を望む(写真左)。ここで風に吹かれてしばし休憩……。

 そして先ほどと同じエレベーターで降りたところ、来たときとは違うフロアに到着した模様。目の前はしっかりおみやげコーナーになっている。抜け目ない段取り。流行りからするともう古いが、マーライオン携帯ストラップなんてのもあった。「どーせ、こんなのもらっても使わないよねぇ〜」なんておみやげの品々をデレデレっと見ていたところ、ふといい考えを思い付いた。台湾・高雄の友人たちにおみやげを買って手紙と一緒に送ろう! この後は先ほどまでとは打って変わって、あっち行ったりこっち行ったり、戻ってもう一度見たりと、彼らが使ってくれそうなものを選ぶのに余念のないマユゲであった。

マユゲ、まだ夏男になれず

 "マー大将"こと「ザ・マーライオン」を後にしたマユゲは、中央に奇妙な噴水がある坂を、ビーチへ向けてゆっくりと降りていく。

 そして木陰を見つけて腰を下ろす。ミネラル・ウォーターを一口飲み、木を見上げると、その葉がちょうどよく日差しを遮ってくれているのが分かる。ビーチでは若い(高校生〜大学生くらい?)シンガポーリアンたちが楽しそうに笑い声を上げながら、ビーチバレーや波遊びに興じている。
 セントーサ島のパンフレットを見ると、島内には「シャングリ・ラ」などの高級リゾートホテルがあるらしく、彼らはきっと休暇を利用して仲間と遊びに来ている学生たちだろうと見受けられた。

 しかし、ビーチで一人ってのも、なんか落ち着かないものだ。ここでもまだマユゲ水着は登場せず、ひと休みののち早々にそこを引き上げた。

I wanna shout!
Another little island
 さて、次は水族館「アンダーウォーター・ワールド」でも覗いてみようか。日光浴を楽しむ人々を尻目に、ビーチに沿って歩き出す。
すると右前方に吊り橋が見えてきた。そしてその先にはこれまたこれまた小さな島がある(写真右)。

 せっかくなので、その吊り橋を渡ってみると(写真左)、

 そこには何やら地図入りの案内板があった(写真右)。読んでみると、どうやらこの島はアジア大陸の最南端であるらしいのだ。大陸って言ったって、島じゃん、コレ。そう思いながらさらに読み進むと、アジアの中で、橋が通っていて陸伝いに行ける場所として最も南なのがここということらしい。ほー、そゆことね。
The southern most point of Continental Asia この場所の意味を理解するやいなや、とりあえずその最も南のなかでも、ギリギリまで南に行ってみようじゃないかと、張り出しているデッキの一番前まで行ってみた。

 俺は今、アジア大陸の最南端に立っている。
 しかも平日だ。

 なんか知らんが、「会社辞めた感」あるなぁー、おい。

 さらにここには三階建ての展望やぐらがあったので、迷わず最上部に登ってみた。そこから、先ほど立ったデッキ、そしてその先の海を見ながらちょっとだけ感慨に耽ったりして。

 おーい、みんなー、俺は今、アジア大陸の最も南にいるぞー。

 そんな、そのまんまの事実を海に向かって叫びたい気分のマユゲであった(しかし日本は実際にはマユゲの背後なのであった)。

マユゲ on プラネット・ジ・アース

 水族館の前に寄り道してしまったマユゲだが、改めて南西向きのビーチ沿いに南東の方角へ歩いていく。するとビーチの一角に仕切りがあり、そこでイルカのショーをやっているではないか。水族館が近いことをうかがわせるね。ショー真っ最中のようであったが、水族館のチケットには「Dolphin Lagoon」の入場券もついていたので、ゲートから中に入ってみる。

Dolphin Lagoon ステージでは、水色のポロシャツとハットを身につけたワイルド・シングス(何故か喩えがグールプサウンズ)ドラマー似のお兄さんが、早口かつハスキーなシンガポール訛りの英語でマシンガントークを繰り広げ、観客の笑いをとっていた(写真右)。

 そのうち、観客の中から二人の方にステージへ上がっていただきお手伝いをしてもらいましょう、という話になる。独り者のマユゲは、おーヤバイヤバイ、と思わずお兄さんから目をそらしたりして。結局、インドから来た青年とイングランド出身のお姉ちゃんがステージへ。彼らは、「笑っていいとも!」の一般人参加コーナーに出てくるシロウトさんのような自己紹介をさせられた後、「イルカちゃんと競おう!フラフープ、どっちが上手かゲーム!」で腰をガンガンに振りまくっていた。

 ご褒美に「イルカちゃんに触れる券」をもらった二人が客席へ戻った後も、お兄さんがイルカの体や習性をイルカちゃんとの掛け合いで説明したり、スタッフがイルカちゃんの背中に乗って一緒に泳いだりとショーは続いた。まぁ、こーゆーショーはどこにでもあるっちゃあ、あるわな。

 しかしマユゲに鳥肌が立ったのはこの後。今まで元気でポップな雰囲気だった場内のBGMがおもむろにスローテンポで壮大なものへと変わる。そろそろ終わりかな、という空気。面白おかしくしゃべくりまくっていたお兄さんが声のトーンを少し落として話しはじめる。

「Ladies and gentlemen,最後に皆さんにお話しておきたいことがあります。それは、今こうしているあいだにも、この魅力的な生き物たちの命が奪われているということです。それは他でもない私たち人類による環境汚染のためなのです」。お兄さんは、この「pollution by man」という最後のフレーズをひと呼吸おいて意味を持たす。

 “Please remember that we do not posses this planet,we share it with these animals..., thank you for joining us today.”

 一斉に観客席から拍手の渦。マユゲもお兄さんの真剣な口調にいたく感動し、スタンディング・オベーション。単に笑わせて終わりじゃないのね。大事、大事。

 さて、今度こそ本当に水族館に入ってみよう。「Dolphin Lagoon」の近くにあった園内図をもう一度よく見てみる。すると「Underwater World」は島の北西の外れにあるというではないか。ここは島の南東部。あちゃー、こりゃほぼ島横断じゃない。園内には汽車のかたちをしたシャトル・バスや高架を走るモノレールなども走っているが、何だかまたいちいちお金を取られるんじゃないかと思い、2〜3kmの距離なのでゆっくり歩いてみることにした。

 島内は"マー大将"のいる丘を中心に緑に覆われている。そしてその中をジャングルチックなサイクリングコースが走っていたりもする。そこでマユゲはこのサイクリングコースを「Underwater World」へ向けて歩く。コースは背の高い木々に覆われていて、ちょうど強烈な日差しを避けられる。誰もいない涼しい林間道をテクテクと進む。30分ほど歩いただろうか。やっと「Underwater World、こっち」という表示が見えてきた。しっかり歩いてまた汗だくのマユゲであったが、中に入ると冷房も効いていてほっとひと息。そして館内の見学順路に沿って進む。

Doragon fish ? まず並んでいるのはゲテモノ類。イレクトリック鰻、毒ガエル(赤・青・黄色・緑、各種あり)、アナコンダ……。うえっ、気持ちワリー。その中で目を引いたのが、タツノオトシゴ(?)(写真右)。一見水槽の中には水草しか入っていないように見えたのだが、その中に植物と動物のあいのこのような生き物が漂っている。この水槽だけは時間が止まっているような不思議な空間。

 この草みたいなのも、光合成じゃなくて何か食べて生きてるんだねぇ。でも、お前楽しい? 生きてて。生まれ変わってもタツノオトシゴにはなりませんように、と神様にお祈りしつつ、次へ。

 ゲテモノ・ゾーンが終わると、メインの大水槽。その下には、横浜八景島シー・パラダイスにあるような人が歩けるガラス張りのチューブが通っていいるのだ。「Underwater World」っていうくらいだからね、これがないと、やっぱり。マユゲもそのチューブ内をゆっくりと走るベルトコンベアに乗ってみる(写真右)。

 アジみたいなヒカリモノや体長50cm以上のサバ(?)の群れなどが結構なスピードで回遊している。




 それに混じって時折エイがマユゲの頭の上を通りすぎていく(写真左)。

 変な顔。
 水槽は途中で区切られていて、その先はデインジャラス・ゾーン。そこにはサメと、サメに食われない大きな魚たちがウジャウジャ。エサをやる飼育係さんも大忙し(写真右)。飼育するというより逆に、魚たちに「オラオラー、早くよこせよー」とイジめられているようだった。
ニッポンジン、ハワイスーキネー。アメリカジン、ロッポンギダイスーキ。

 ひと通り見終え出口に向かうと、そこにはやはりみやげもの屋。そこは素通りし、近くのキヨスクでおやつのアイスキャンディーを買って食べる(写真左)。久し振りに見るなー、こういう合成着色料でできたようなアイス。

 このキヨスクの上はモノレールの駅だ。丘の上にあるケーブルカー・ステーションまでは登りが多そうだし、モノレールに乗ってみるか。階段を登って高架モノレールのホームに向かうがチケット売り場も改札口もない。「?」と思ってパンフレットなどをもう一度よく読むと、どうやら島内の移動手段のほとんどは無料らしい。なーんだ、わっかりにくいなー、このパンフ。早く言ってよ、往きは歩いちゃったよ。

 帰りのケーブルカーは乗車待ちが20人ほど並ぶくらい混んでいた。順番が来て乗り込むと、今度はアメリカ人二人組のおじさんと相席。軽い挨拶のあと、こういう場合たいてい「Where are you from?」という話になる。日本だというと、一方の男がかつて自分は日本に二年滞在してたんだとのこと。彼は次々に日本の地名を並べてくれる。その中で「ROPPONGI!」が一番お気に入りだった様子。もう一方が、マユゲが来ていたTシャツのプリントにある「spring football league」という文字を見て、サッカーが好きなのか、と尋ねてきた。聞けば彼はサッカーのコーチをしているという。いや、サッカーはやらないが、アメリカン・フットボールは好きだし、かつてやっていたよ、と答えると二人は目を輝かせる。やはりアメリカ人、このスポーツを嫌いなわけはない。すかさずNFLのどのチームのファンか、ときたので正直に、ラムズが好きだと返す。ラムズは昨年スーパーボウルを制覇しただけに、にわかファンだと思われるのもしゃくなので、LA本拠地時代からと付け加えたが。すると二人は、パッカーズはどうだ、と突っ込んでくる。そう、二人はグリーンベイ近郊出身なのだ。特にファンではないが、クォーターバックのブレット・ファーブは知ってるよ、とフォローすると、二人は口を揃えて、「Oh−−−!」。調子にのったマユゲ今度はこっちから、えっと、スタジアムはSoldier Fieldだっけ?と聞くと、「No−−−!ゥーランボー、フィールド!」と、場内アナウンスのような節をつけて訂正された。あ、そうか、Soldier Fieldは同じカンファレンスのライバル、シカゴ・ベアーズのホームだったね、sorry,sorry。しかし自分の得意分野で話ができると結構楽しいものだ。

 「ROPPONGI!」好きのおじさんが、ここシンガポールのワールド・トレード・センターで働く奥さんとこれから待ち合わせとのことで、ケーブルカーを降りたところでサヨナラしたのだが、彼は別れ際に「シッツレイシマース!(失礼します)」と言って去っていった。

アラブ三兄弟のかわいい店にて、我思う

 ケーブルカーでまたワールド・トレード・センターまで戻ってきた。バス停までのあいだにはホーカーズ。そして時は夕方。ここで夕飯食べてっちゃおうかな。ということで、本日二度めのホーカーズmeal。

 今回はインド料理屋でロティ(パンの一種)とおかずを頼んで、それに隣の店で飲み物を注文し、近くの席につく。このドリンク・スタンドが何故か興味深かった(写真左)。アラブ系のおじいさん三人が営んでいる店なのだが、看板に「HAMIN BROTHERS TEA★COFFEESHOP」とあるところを見ると、どうやらおじいさんたちは兄弟なのらしい。そのうちの二人が大きな声で何かやりあったりしているが、きっと何十年ものあいだ毎日かわいい色のジュースやお茶を出しながら、こうやて時々けんかもしつつ生活してきたのだろう、と勝手に想像を膨らませる。

 こうやって一生懸命働いて、お客さんにしっかりとした商品を提供して代金をいただき、そのお金で必要な物資を買い、生活していく。平凡といってしまえばそれまでだが、無駄なものを削ぎ落とした、人間の営みの原点を見させられているような気がする。そういう生活をしたいかと問われれば決してそうではないのだが、不必要なモノやサービスで無理矢理お金をまわしているようなこともある国で暮らしてきた僕らの目には、新鮮に映るのだろう。

 東南アジアを旅していてこういった小さな店に入ると、シンプルだけど何か美しい暮らしを垣間見れることがあって、とても刺激を受ける。台湾の屋台で、店の手伝いをする小学生くらいの男の子が代金を受け取った際に、きちんと「謝謝!」と言い、そしてその言葉に心がこもっていたのを感じたとき、ちょっとした感動を覚えたものだ。

 勉強になるぜ、アジア!

 この後は、再びダブルデッカーに乗りホテルへと戻る。途中いねむりしてしまったが、降りると外はもうすっかり暗くなっていた。YMCAホテルに併設されている教会にも灯かりが点り、クレッセントと競演しているのが目に入る。

 よし、チェックアウト後ホテルに預けておいた荷物を受け取って、今夜は夜行列車で国境越えだ。


2001.2.26 シンガポールにて

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